2008年03月30日

18番の意味を教えてくれた。桑田真澄

1994年、10月8日、ナゴヤ球場。異様な熱気に包まれた球場のマウンドには背番号18が立っていた。読売巨人軍のエース、桑田真澄。130試合目まで同率首位の巨人と中日が直接対決するという野球の神様がくれた、しびれるようなプレゼント。この試合の視聴率は関東地区で48.8%を記録したという。6対3のリードで迎えた7回。「ミスタープロ野球」長島茂雄監督がスポーツを超えた何かを感じさせる、その試合の最後を任せたのが桑田だったのだ。

桑田真澄は決して体格的に恵まれたピッチャーとは言えない。身長は174cm、体重80kg。プロで飯を食うにはあまりに小さい体。PL学園時代には、清原とともにKKコンビとして全国に名を馳せたが、プロに入って活躍するのは難しいと言われていた。事実、ジャイアンツの入団一年目は2勝という勝ち星にとどまっている。ただ、持ち前の向上心と誰にも負けない練習量が彼をジャイアンツのエースにのし上げた。

気まぐれな大人社会に弄ばれたという意味でも桑田は恵まれてはいなかった。ドラフトでは、ジャイアンツ入りを熱望していた清原を欺いてジャイアンツに入団したかのように報道され、すっかりダーティなイメージが付いた。その後、いわれなき野球賭博の疑いがかけられ、信じた人に裏切られたことで背負わなくてもいい多額の借金を背負うと「投げる不動産屋」と揶揄された。

恵まれない体格。世間の冷たい視線。それでも背番号18は一言の言い訳をすることもなく、黙々と投げ続けた。桑田は言う「大事なのはプロセスだ。プロである以上結果も大事だが、自分の場合、その上にプロセスがある」PL学園時代、ある人が真っ暗な早朝5時に練習場に行ってみると、一人黙々と走る桑田の姿があったという。筋肉の使い方にカンフーの理論を取り入れ、ムチのようにしなるその投球フォームは多くのプロ野球のピッチャーから理想とされている。松坂大輔が18番にこだわっているのも、少年時代から桑田に憧れていたからだ。

1995年には、右ひじの側副靱帯断裂という重傷を負い、ひじにメスを入れるという決断を下すが、地獄のようなリハビリを越えてカムバックした。リハビリで使用したジャイアンツ球場には、「桑田ロード」と呼ばれる道がある。桑田が懸命に走り続けた結果、芝が剥げ上がり道ができたのだ。そして、投げられない桑田がひたすら走るその姿を見ようと、毎日足を運ぶファンがいたという。

最初についてしまったイメージとは全く逆で、人格者としても有名だ。PL学園時代の1年先輩が、試合中に頚椎を骨折した。命は取りとめたが、一生歩けなくなった。その先輩を誰よりも心配し、励ましたのが、桑田と清原だという。励まされたその先輩は口にスティックをくわえ、9年がかりで本を書き上げた。タイトルは『桑田よ 清原よ 生きる勇気をありがとう』心揺さぶる名著です。

話は戻って、ナゴヤ球場。ジャイアンツの3本柱の最後を任されたエースの中のエース桑田真澄。マウンドに登った18番は一球、一球投げるごとに何か呟いていた。本人によれば「ありがとうございます」と言っていたんだとか。ストライクになっても「ありがとうございます」 ヒットを打たれても「ありがとうございます」 全てが自分を磨いてくれる砥石だと思うからだ。

無失点で7回、8回と来て、9回、ツーアウト。中日ドラゴンズ最後のバッターは小森哲也。桑田が最後に投じた1球はカーブ。本人はまさか三振が取れると思っていなかったらしく、そういう意味で一瞬びっくりしたという。そして、小森選手のバットが空を切った瞬間、桑田はジャイアンツだけでなくみんなのエースになった。その18番が今週引退を発表した。

桑田投手、僕は阪神ファンなのであなたが嫌いでした。でも、18番はあなたにこそふさわしい。野球以上のこと、色々感じさせられる数少ないプロのスポーツ選手だったと思います。本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
posted by isoken at 23:59| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
はじめまして。

私は沖縄に住んでいます。名護に住んでいるため、常にキャンプでは日ハムを見学することが出来る環境です。先週、桑田氏がお目見えしていまして初めて彼の姿を近くで見ました。(どうやらダルビシュと斉藤祐樹との会見だったようです。)

近くで見た印象としては、小さい男だと思いました。(僕自身が、昔、バスケの選手で190ありましたので・・・)

この小さな男が野球界を代表していた方か・・・。なんか、不思議な感じでした。そこで、桑田氏のことを知りたく「桑田ロード」で検索、この過去の日記に辿りついたしだいです。

日記に書かれているように、彼は努力の人間ですね。サインしか貰っていませんが、会えただけで努力する人間の素晴らしさを教えて貰った気がします。
Posted by tomo at 2011年03月01日 17:05
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